骨盤底筋を鍛えると、何が変わる?研究でわかった5つのこと
この記事は論文・学会・公的機関の資料をもとに作成し、出典を記事の最後に示しています。医師の監修は受けていません。編集方針
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)は、女性の体操という印象を持たれがちです。けれど男性の骨盤底筋には、勃起を保つ筋肉と射精のリズムをつくる筋肉が含まれていて、EDや早漏との関係が臨床試験で調べられてきました。
男性の骨盤底筋には、勃起を保つ筋肉と射精のリズムをつくる筋肉が含まれます。EDの男性55人のランダム化比較試験では、トレーニングを続けたグループで勃起機能の評価が良くなり、早漏の男性40人の研究では33人が射精をコントロールできるようになったと報告されています。10件の臨床試験をまとめたレビューも、EDと早漏の両方で前向きな結果を示しました。ただしどれも小規模な研究で、治療の代わりにはなりません。
骨盤底筋とは
骨盤底筋は、骨盤の底で恥骨から尾骨までハンモックのように張っている筋肉のグループです。膀胱や前立腺を下から支え、男性では陰茎の付け根にもつながっています。「PC筋(恥骨尾骨筋)」と呼ばれることもあります。
ゆるめた状態
締めた状態
| 筋肉 | かかわること |
|---|---|
| 坐骨海綿体筋 | 陰茎の付け根を両側から包み、勃起したときに血液をとどめる働きにかかわると考えられています |
| 球海綿体筋 | 射精のときにリズミカルに収縮し、精液を送り出します |
| 肛門挙筋(PC筋を含む) | 骨盤の底を支え、肛門や尿道を締めます |
研究でわかった5つのこと
No.1勃起を保つ筋肉を、直接鍛えられる
勃起は、陰茎に流れ込んだ血液がとどまることで保たれます。坐骨海綿体筋はその付け根を包んでいて、締めると陰茎の根元の圧が高まると考えられています。手足の筋肉と同じように、骨盤底筋も鍛えれば収縮する力が上がります。勃起にかかわる筋肉を、器具なしで直接トレーニングできるのが、骨盤底筋トレーニングの大きな特徴です。
No.2射精のタイミングに、気づきやすくなる
射精は、球海綿体筋などの骨盤底筋がリズミカルに収縮することで起こる反射です。ふだん意識することのない筋肉ですが、締める・ゆるめるをくり返すうちに、どこに力が入っているかがわかるようになります。射精が近づくときの体の感覚に気づき、コントロールする助けになるのではないかという考えから、早漏の研究が行われてきました。
No.3EDの臨床試験で、勃起機能の評価が良くなった
- 方法
- 理学療法士の指導による骨盤底筋トレーニング(自宅での運動とバイオフィードバック)と、生活習慣の指導だけのグループを3か月比較し、その後は全員がトレーニングを実施
- 掲載
- British Journal of General Practice
3か月の時点で、トレーニングをしたグループは生活習慣の指導だけのグループより、勃起機能の評価が良い結果でした。くわしくはケーゲル体操とEDにまとめています。
No.4早漏の男性40人のうち33人が、射精をコントロールできるようになった
- 対象
- 初めての性経験のころから、挿入後1分以内に射精することが続いている男性
- 方法
- 理学療法による骨盤底筋トレーニング(電気刺激・バイオフィードバックを含む)
- 注意
- 比較のための対照群がない研究です。146秒は、コントロールできた33人の平均です
研究者らは結果を「有望」としつつ、より大きな試験での確認が必要だとしています。くわしくは早漏と骨盤底筋トレーニングにまとめています。
早漏・EDが気になる方へ諦めていませんか?No.510件の臨床試験のまとめでも、前向きな結果だった
オーストラリアの研究者が、骨盤底筋トレーニングとED・早漏の臨床試験10件をまとめた系統的レビュー(Myers・Smith、2019年)では、EDを対象にしたすべての試験で、トレーニングをしたグループの改善の割合が比べたグループより高い結果でした。早漏でも多くの試験で同じ傾向がみられ、著者らは「EDと早漏に対して有効と考えられる」と結論づけています。
一方で、研究の質は低〜中程度で、トレーニングの回数・期間・指導の方法がばらばらなため、どのやり方がいちばん良いかはまだわかっていません。
続けやすさも、強みのひとつ
数秒締めて同じ時間ゆるめるを10回。1日3回でも10分かかりません。
座ったまま、通勤電車の中でもできます。見た目には何も変わりません。
ジムも器具も不要です。研究と同じく、12週間を一区切りにします。
始め方:1日3回・12週間
- あお向けに寝て膝を立てるか、椅子に深く座ります。
- おならをがまんするように、肛門のまわりを体の内側へ引き上げます。お腹・お尻・太ももには力を入れません。
- 息を止めずに3〜5秒締め、同じ時間かけてゆるめます。これを10回で1セット。
- 1日3セットを毎日。12週間かけて、締める秒数を10秒まで延ばします。
場所の見つけ方とよくある間違いは男性のケーゲル体操のやり方で、有酸素運動・筋トレとの組み合わせ方は男性の運動プランで紹介しています。
研究の限界
- どの研究も参加者が数十人ほどと少なく、期間も3か月前後です。
- 多くは理学療法士の指導や機器を使った方法で、自宅で一人で行う運動やアプリで同じ結果になるかはわかりません。
- EDの原因は血管・神経・ホルモン・心理面などさまざまで、骨盤底筋トレーニングだけで十分とは限りません。
- 現時点で、骨盤底筋トレーニングがEDや早漏の治療として確立しているとはいえません。
よくある質問
ケーゲル体操はEDに効果がありますか?
英国で55人の男性を対象にしたランダム化比較試験(Dorey ら、2004年)では、骨盤底筋トレーニングを続けたグループで勃起機能の評価が良くなったと報告されています。ただし小規模な研究で、EDの原因は血管・神経・ホルモン・心理面などさまざまです。EDの悩みはまず泌尿器科やメンズクリニックに相談してください。
早漏にケーゲル体操は役立ちますか?
生涯型の早漏がある男性40人に12週間の骨盤底筋トレーニングを行ったイタリアの研究(Pastore ら、2014年)では、40人中33人が射精をコントロールできるようになったと報告されています。対照群のない小規模な研究で、研究者自身もより大きな試験での確認が必要だとしています。悩みが続く場合は医療機関に相談してください。
1日にどれくらいやればいいですか?
数秒締めて同じ時間ゆるめる動きを8〜10回で1セットとし、1日3回(朝・昼・夜など)が目安です。慣れないうちは1日1〜2回から始めてもかまいません。EDや早漏を対象にした研究の多くも、毎日のトレーニングを12週間(約3か月)前後続けています。
変化を感じるまでどれくらいかかりますか?
研究の多くは、12週間(約3か月)前後の継続で評価しています。感じ方には個人差が大きく、期間を過ぎても変化がない場合や悩みが続く場合は、泌尿器科やメンズクリニックに相談してください。
参考文献
- Dorey G, et al. Randomised controlled trial of pelvic floor muscle exercises and manometric biofeedback for erectile dysfunction. Br J Gen Pract. 2004;54(508):819-825. pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1324914/(閲覧日 2026年10月13日)
- Pastore AL, et al. Pelvic floor muscle rehabilitation for patients with lifelong premature ejaculation: a novel therapeutic approach. Ther Adv Urol. 2014;6(3):83-88. doaj.org/article/aea4980b10dd4dd791f1f3168656deb5(閲覧日 2026年10月13日)
- Myers C, Smith M. Pelvic floor muscle training improves erectile dysfunction and premature ejaculation: a systematic review. Physiotherapy. 2019;105(2):235-243. researchonline.jcu.edu.au/57900/(閲覧日 2026年10月13日)
- Memorial Sloan Kettering Cancer Center. Pelvic Floor Muscle (Kegel) Exercises for Males. www.mskcc.org/cancer-care/patient-education/pelvic-floor-mus(閲覧日 2026年10月13日)