日本の男性に不足しがちな栄養素は?世界の国と比べてみた
参考にした論文や資料は記事の最後に載せています。編集方針
日本の食事は栄養バランスがいいと言われますが、男性の平均を国の基準と並べると、届いていない栄養素がいくつかあります。世界の国と比べると、日本ならではの弱点も見えてきます。国の調査と世界の推計、両方の数字で確かめます。

国の調査(令和元年)で20歳以上の男性の平均を「日本人の食事摂取基準2025年版」と比べると、カルシウム・マグネシウム・ビタミンDが足りていません。差がいちばん大きいのはカルシウムで、1日250〜300mgほど不足しています。亜鉛は平均で推奨量とほぼ同じ、鉄は届いています。年代別では20〜40代の不足が目立ちます。世界185か国の推計と比べると、カルシウムの不足は日本・中国・韓国など東アジアに共通し、欧米では少なめでした。また同じ国・同じ年代で比べると、マグネシウムや亜鉛などは男性のほうが不足しやすいと報告されています。
目次
日本の男性に足りない栄養素(国の調査から)
まずは日本の数字です。令和元年国民健康・栄養調査の20歳以上の男性の平均と、2025年版の食事摂取基準を並べました。ミネラルの中から、男性の体づくりに関係が深い5つを選んでいます。
| 栄養素 | 平均 | 基準と差 |
|---|---|---|
| カルシウム | 約500mg | 推奨量750〜800mg 約250〜300mg不足 |
| マグネシウム | 270mg | 推奨量330〜380mg 約60〜110mg不足 |
| ビタミンD | 7.9µg | 目安量9.0µg 約1µg不足 |
| 亜鉛 | 9.2mg | 推奨量9.0〜9.5mg 平均ではほぼ同じ |
| 鉄 | 8.3mg | 推奨量6.5〜7.5mg 平均では届いている |
いずれも1日あたりの量です。平均は20歳以上の男性の値で、令和元年国民健康・栄養調査(第1表の2)、基準は日本人の食事摂取基準2025年版の18歳以上の男性の値(年齢で幅があります)。カルシウムの平均は調査報告の表では498mg、健康長寿ネットでは503mgとされているため、約500mgとしました。
亜鉛は、平均で見るとほぼ足りている計算です。ただ平均なので、食べる量が少ない人や肉・魚介をあまり食べない人では足りていないこともあります。亜鉛については亜鉛の効果にまとめています。
20〜40代ほど足りていない
同じ調査を年代別に見ると、若い世代ほど足りていない傾向がはっきりします。
| 年代(男性) | カルシウム | マグネシウム |
|---|---|---|
| 20代 | 462mg | 227mg |
| 30代 | 395mg | 236mg |
| 40代 | 442mg | 251mg |
| 50代 | 471mg | 265mg |
| 60代 | 533mg | 286mg |
| 70代 | 585mg | 298mg |
令和元年国民健康・栄養調査 第1表の2の平均値(1日)。
30代のカルシウムは平均395mgで、推奨量(750mg)の半分ほどしかありません。マグネシウムも20〜30代は230mg前後で、推奨量(20代340mg、30〜40代380mg)との差は100mg以上です。ビタミンDも20代5.9µg、30代5.5µg、40代6.4µgと、70代の10.9µgの半分ほどでした。
仕事が忙しい年代ほど、ということかもしれませんが、この調査だけでは理由まではわかりません。いずれにしても「まだ若いから大丈夫」とは言えない数字です。
世界の国と比べると
では、ほかの国の男性はどうでしょうか。2024年に発表された解析(Passarelli ら)は、185か国で、食事からとる15種類の栄養素が足りていない人の割合を推計しています。
- 方法
- 各国の食事データ(2018年)から摂取量の分布を推計し、国際的な必要量に届かない人の割合を計算した。摂取量の分布の形は、多くの国で似た国のデータを借りている
- わかったこと
- 世界全体では、ヨウ素・ビタミンE・カルシウム・鉄が、それぞれ人口の6割以上で足りていないと推計された
- 注意
- 食べ物からとる量だけの推計で、栄養を強化した食品やサプリは含まれていない。各国の実際の調査とずれることがある
この研究の公開データから、日本と、日本の読者になじみのある10か国について、20歳以上の男性で「足りていない人の割合が高い栄養素」の上位3つを並べました。ヨウ素・セレン・ビタミンDは、下の「注意」で書く理由から除いています。
| 国・地域 | 推計で不足が多い栄養素(上位3つ、多い順) |
|---|---|
| 日本 | ビタミンB6、マグネシウム、亜鉛 |
| アメリカ | ビタミンE、ビタミンC、マグネシウム |
| イギリス | ビタミンE、ビタミンA、鉄 |
| ドイツ | 葉酸、鉄、ビタミンE |
| フランス | 葉酸、ビタミンA、ビタミンC |
| 中国 | ビタミンE、カルシウム、ビタミンA |
| 韓国 | ビタミンE、ビタミンC、鉄 |
| 台湾 | 鉄、ビタミンE、ビタミンC |
| タイ | 亜鉛、ビタミンC、マグネシウム |
| ベトナム | 葉酸、マグネシウム、ビタミンB2 |
| インド | 葉酸、ビタミンB2、亜鉛 |
Passarelli ら(2024年)の公開データ(2018年の推計)を、20歳以上の男性について年齢層の人口で重みづけしてまとめたもの。台湾は人口データがないため、年齢層の単純平均です。ヨウ素・セレン・ビタミンDは除外。
- ビタミンEは多くの国で上位:アメリカ、イギリス、中国、韓国では1位でした。日本は上位3つに入っていません。
- マグネシウムは日本・アメリカ・タイ・ベトナムで上位:日本については、国の調査で足りていない結果と向きは合っています。
- カルシウムは東アジアで多い:上位3つに入ったのは中国だけですが、推計では日本・中国・韓国で7割前後が不足とされ、アメリカ・ドイツ・フランスの2割前後以下と比べてはっきり多めでした。乳製品をとる量の違いが考えられ、国の調査で日本の男性のカルシウムが大きく足りないこととも合っています。
なお、日本で上位に出たビタミンB6・マグネシウム・亜鉛は、推計の割合がほかの国よりかなり高く出ています。ただ、推計のもとになった摂取量は、日本の国の調査より低めです。たとえば亜鉛は、国の調査では平均で推奨量に届いています。日本のこの3つの数字は、実際より高めに出ている可能性が高いと考えてください。
男性のほうが不足しやすい栄養素
この研究では、性別による違いも調べています。同じ国・同じ年代で比べると、男性のほうが不足しやすかった栄養素は次の7つでした。
- マグネシウム
- 亜鉛
- ビタミンC
- ビタミンA
- ビタミンB6
- ビタミンB1
- ナイアシン(ビタミンB3)
理由まではこの推計からはわかりませんが、マグネシウムと亜鉛は、日本の国の調査でも男性で「足りていない」「ぎりぎり」の栄養素です。男性の食事で意識しておきたい組み合わせと言えます。
国別の数字を見るときの注意
国別の数字は、食べ物からとる量だけを使ったモデルによる推計です。栄養を強化した食品(ヨウ素を加えた塩など)やサプリは含まれていないため、それらが広く使われている国では実際より不足が多く出ます。また、似た国のデータを借りて計算している部分もあり、各国の調査とずれることがあります。正確な割合よりも、「その国でどの栄養素が上位に来るか」「国どうしでどちらが多いか」という比べ方で見るのが向いています。ヨウ素とセレンは公開データが論文の数字と合わなかったため、ビタミンDは日光で皮膚につくられる分を含まないため、この記事の比較から外しました。男性の鉄も、必要量の置き方で不足が高めに出やすく、表の「鉄」は参考程度にしてください。
なぜ今の食事で足りなくなるのか
国の調査で足りていないカルシウム・マグネシウム・ビタミンDは、どれも「昔ながらの日本の食事」に多い食品からとっていた栄養素です。
- 魚を食べる量が減った:日本人1人あたりの魚介類の消費量は、2001年度の40.2kgをピークに、2021年度は23.2kg(概算)と4割以上減りました。2011年度には肉が魚を上回っています。魚はビタミンDの主な供給源で、骨ごと食べる小魚はカルシウム源にもなります。
- 白いごはん・パン・麺が中心:精白米のマグネシウムは100gあたり23mgで、玄米(110mg)の約5分の1です(いずれも炊く前)。精製した穀物が主食だと、主食からとれるマグネシウムは少なくなります。
- 豆・海藻・野菜が少ない食事:外食やコンビニ食、丼もの・麺類が続くと、豆腐や納豆、海藻、青菜がとりにくくなります。この3つはカルシウムとマグネシウムの両方をとれる食品です。
マグネシウムが足りなくなる理由はマグネシウム不足は男性にも多い、日光と魚の話はビタミンD不足は男性にも多いでくわしく書いています。
何を食べればいいか
足りない栄養素ごとに、とりやすい食品を挙げます。どれもスーパーで手に入ります。
- カルシウム:牛乳・チーズ、しらす干しや小魚、油揚げ・焼き豆腐・納豆、小松菜、ひじき。牛乳は100gあたり110mgなので、コップ1杯(200mL)で約220mgです。不足分の250〜300mgは、牛乳1杯と豆腐や青菜の小鉢でおおよそ埋まります。
- マグネシウム:納豆・豆腐などの大豆製品、ひじき・わかめなどの海藻、そば、玄米や雑穀。白米に玄米や雑穀を混ぜるだけでも増えます。
- ビタミンD:鮭・いわしなどの魚、しらす干し、きくらげや干ししいたけ、卵。鮭は100gあたり32.0µgあるので、1切れで目安量の9.0µgを超えます。
- 亜鉛:牡蠣、牛肉、豚レバー、大豆製品、ごま。平均では足りていても、食事量が少ない人は意識しておきたい栄養素です。
豆腐・納豆・小魚・海藻は、カルシウムとマグネシウムをまとめてとれるので、和食の小鉢を1品足すのがいちばん手軽です。男性機能に関わる栄養素をまとめて確かめたい人はその食事、本当に十分?男性機能から見た栄養チェック、食品ごとの一覧は精力・勃起力と食べ物一覧を見てください。
普段の食事から見直したいなら
平均の数字はわかっても、自分の食事でどれが足りていないかは、記録してみないとわかりません。毎食計算するのは大変なので、写真で残して1〜2週間の傾向を見るのが続けやすい方法です。
写真から推定した大まかな量で、正確な摂取量ではありません。
受診の目安
食事の見直しは、体調に問題がない人向けの話です。次のような場合は、食事やサプリで様子を見ずに医療機関で相談してください。
- だるさ、食欲のなさが2週間以上続く、急に体重が減った:内科へ。栄養以外の病気が隠れていることがあります。
- 動悸、息切れ、顔色が悪いと言われる:内科へ。貧血などを血液検査で調べられます。
- 腰や骨の痛みが続く、軽く転んだだけで骨折した:内科・整形外科へ。
- サプリを飲んでいて、吐き気・下痢・のどの渇きが続く:サプリをやめて内科へ。
- 血尿、排尿時の痛み、発熱がある、急に勃起しにくくなった:栄養とは別の原因が考えられます。泌尿器科か内科へ。
よくある質問
日本の男性にいちばん足りていない栄養素は何ですか?
国の調査(令和元年国民健康・栄養調査)で推奨量との差がいちばん大きいのはカルシウムです。20歳以上の男性の平均は1日約500mgで、推奨量(750〜800mg)に250〜300mgほど届いていません。次いでマグネシウム(平均270mg、推奨量330〜380mg)、ビタミンD(平均7.9µg、目安量9.0µg)が足りていません。
日本の食事は、海外と比べて栄養が足りないのですか?
一概には言えません。世界185か国の推計では、カルシウムの不足は日本・中国・韓国など東アジアで多く、アメリカやドイツ、フランスでは少なめでした。一方、ビタミンEはアメリカやイギリスなど多くの国で上位に入りましたが、日本では上位に入っていません。国ごとに足りない栄養素の顔ぶれが違う、と考えるのが近いと思います。
若いほうが栄養が足りていないのですか?
国の調査では、カルシウム・マグネシウム・ビタミンDの平均は20〜40代の男性で特に低く、60〜70代のほうが多くとれていました。年代が上がるほど魚や野菜、豆を食べる量が多いことなどが考えられますが、この調査だけで理由ははっきりしません。
マルチビタミンを飲めば、まとめて解決しますか?
足りない分を補う手段にはなりますが、栄養素によってはとりすぎの上限量が決まっています。何種類も重ねて飲むと、知らないうちに上限を超えることがあります。まずは食事でどれが足りないかを確かめ、サプリを使うなら量を確認してください。腎臓の病気がある人や薬を飲んでいる人は、医師や薬剤師に相談してから使ってください。
参考文献
- 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」第1部 栄養素等摂取状況調査の結果 第1表の2(男性、年齢階級別)公的機関原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「カルシウムの働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版、日本食品標準成分表(八訂)にもとづく)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「亜鉛の働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「鉄の働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- Harvard Gazette. Billions worldwide deficient in essential micronutrients (2024年8月29日). Passarelli S, et al. Global estimation of dietary micronutrient inadequacies: a modelling analysis. Lancet Glob Health. 2024;12(10):e1590-e1599 の紹介記事資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- Passarelli S, Free CM, Shepon A, Beal T, Batis C, Golden CD. Global estimation of dietary micronutrient inadequacies: a modelling analysis. Lancet Glob Health. 2024;12(10):e1590-e1599. 国・年齢・性別ごとの推計データ(著者のデータ公開ページ)資料原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 農林水産省「お米の栄養(玄米と精白米の成分)」(日本食品標準成分表にもとづく)公的機関原文を見る閲覧日 2026年11月1日
- 農林水産省「魚の消費について」(消費者の部屋 特別展示)公的機関原文を見る閲覧日 2026年11月1日



